情報アーキテクチャとCMS: 自由自在なIAを実現する「WebRelease」

執筆: メディアプローブ株式会社 シニアインフォメーションアーキテクト
浅野 紀予

「情報アーキテクチャ」って?

Webサイトに関わる人々の間では、かなり市民権を得てきたように見える「情報アーキテクチャ」という用語。情報アーキテクチャ(Information Architecture: IA)とは、単なる情報構造(information structure)ではなく、「情報構造設計」という作業やプロセスのことを意味します。Webサイトがより大規模に、より複雑なものに進化するにつれて、それを支える情報アーキテクチャへの注目度はますます高まりつつあります。

日本では一時期、構造設計を手抜きした建物でのさまざまなトラブルが世間を騒がせました。まさにそれと同じで、Webサイトという一種の“建築物”においても、その土台となる情報アーキテクチャはけっして欠かすことのできない重要なポイントです。

では、Webサイトの制作においてその情報アーキテクチャを具体的に形にするには、どんなツールを使えばよいのでしょうか?
WebRelease 2
そこで強力な味方となるのが、「WebRelease」というCMSなのです。

テンプレートデザインの落とし穴

WebReleaseにはさまざまなメリットがありますが、ここではそのユニークな「テンプレート」の特長について、一般的におなじみのブログツールの場合と比較しながら考えてみましょう。

CMSにおけるテンプレートの仕組みは、みなさんよくご存知のことと思います。

  1. ページのひな形となる「テンプレート」の中で、ページごとに内容が異なる部分が変数として記述されている
  2. その変数部分に、CMSの管理画面で入力した「データ」が埋め込まれて、最終的な「ページ」として出力される
  3. ナビゲーションなどの共通要素はテンプレート内で記述され、一括変更できるようになっている
CMSテンプレートの基本原理
この基本原理は、ページの出力方法が静的(スタティック)でも動的(ダイナミック)でも変わりません。テンプレートを利用することで、同種のページのデザインを統一でき、自動的にサイトを構造化できるというメリットが生まれます。

ただしこのメリットは、裏を返せば、テンプレートによってコンテンツが制約を受ける場合があることも意味します。器の大きさや形が決まっていると、そこに入れたいものの性質次第では、うまく入らないことがあり得るからです。

ブログの場合、「トップページ」→「月別/カテゴリ別の一覧ページ」→「 個別記事ページ」というブログ一般の階層構造に基づき、各ページ種別ごとにテンプレートが用意されています。しかし、その単純な階層構造に当てはまらないページや、内容が通常のブログ記事とは異なるページなどを作りたい場合は、別のテンプレートを使わねばなりません。中身を変えたい時に、それを入れる器まで変えることになるわけです。

しかし、器となるテンプレートの種類が増えれば管理や運用の手間も増えるため、ページデザインの自由度を取るか、CMSとしての使いやすさを取るかのトレードオフに悩まされることになります。

ブログとは別次元の柔軟性をもたらすWebRelease

では、WebReleaseの場合はどうなのでしょう?

WebReleaseのテンプレートには、たとえ1種類のテンプレートしかなくても、多種多様なページデザイン上のニーズに応えられるほどの柔軟さがあり、それが一般的なブログツールとの最大の違いとなっています。

なぜそれが可能なのかというと、WebReleaseのテンプレートはブログツールとは異なる「真っ白なキャンバス」だからです。トップページや個別記事ページなどといった特定の形式のテンプレートは用意されていません。HTMLでもその他のフォーマットのファイルでも、ページのソースコード全体を自由に記述できるのです。

また、テンプレートに埋め込む変数も、Movable Type(以下、MT)やWordPress(以下、WP)などのブログツールのように、「テンプレートタグ」としてあらかじめ定義されたものだけに限定されません。どんなデータでも自分で自由に変数として定義し、呼び出すことができます(※)。WebReleaseのテンプレートは、単にページのひな形となるだけではなく、そこで呼び出すデータそのものを定義するツール — すなわち、CMSのデータベース構造(スキーマ)を設計できるツールでもあるのです。

システム上の制約を受けることなく、テンプレートを作成するだけでスキーマレベルからの自由な設計が可能になる WebReleaseは、さまざまなニーズに基づく複雑な情報アーキテクチャを実践する上で、まさに理想的なCMSと言えます。
(※)MTやWPにも、自分で変数を定義するための「カスタムフィールド」機能がありますが、WebReleaseのようにテンプレートレベルで変数を定義できないため、用途は限定されることになります。たとえば、「ブログの設定」で入力するようなサイト全体に関わる情報を追加したい場合、カスタムフィールドでは対応できません(専用のプラグインを使うなどの措置が必要になります)。

アイデアをすぐに形にできるスピーディなサイト制作が可能に

WebReleaseの大きなメリットとしてもう一つ挙げておきたいのが、いわゆる「テンプレートタグ」の種類が劇的に少ない、という点です。

MTやWPの場合、テンプレートタグの種類は優に数百個を超えています。先に触れたように、これらのツールではよく使われる変数や関数をどんどんテンプレートタグとして定義しているため、その種類が増える一方なのです。これだけ多いとすべて覚えておくのはまず不可能なので、リファレンスと首っ引きでコーディングすることになりがちです。

しかし、WebReleaseで「拡張タグ」と呼ばれるテンプレートタグは、なんとたったの5種類だけです(現行バージョン2.31Bの仕様)。他に数十種類の「関数」が用意されていますが、他のCMSに比べれば非常に少ないでしょう。
WebRelease 2の5種類の拡張タグ
この5種類のタグだけであらゆる記述が可能なので、コーディング方法に悩むことなく、思いついたアイデアをすぐに形にできます。スピーディな実装が可能になればコーディング作業の負荷が減り、その分デザイン上の発想がさらに広がるという好循環も生まれます。

また WebReleaseでは、このように条件分岐と配列データのループ処理のみのシンプルな記述によって高度な汎用性を備えたテンプレートを作成できるため、さまざまな情報アーキテクチャへの臨機応変な対応が可能です。たとえば、ブログツールでは一覧ページと個別ページがテンプレートレベルで区別されていますが、WebReleaseではそのような区別を必要としません。1つのテンプレートで両方のタイプのページを作ることが、いとも簡単にできるのです。

まとめ — WebReleaseのさらなる可能性

このように、テンプレートの仕様ひとつとっても非常にユニークなWebReleaseというCMSは、セミナーでの短時間の解説などではいまひとつその魅力が理解しにくい、というご意見を耳にすることがあります。実は私自身、自分で触ってみるまではそうでした。が、実際に使えば使うほど、その可能性の大きさが驚くほど明らかになってきました。

もちろん、MTやWPなどのブログツールにはそれぞれにふさわしい使いどころがありますし、いずれも素晴らしいパワーと個性を備えたツールです。しかし、いわゆるブログ的な作りに留まらない、より大規模で複雑な情報アーキテクチャを必要とするサイトでは、WebReleaseこそがその実力を遺憾なく発揮できることでしょう。

ただし、真っ白なキャンバスに絵を描くには、あらかじめ線が描かれた“ぬり絵”に色を塗るのと違って、さまざまなテクニックを用いることになるものです。それと同様に、WebReleaseでのサイト制作には独自のノウハウが必要となります。弊社ではこれまで培った豊富な経験と実績に基づくノウハウを駆使して、WebReleaseを活用した先進的なWebサイト制作を行っていきます。

また、本稿では私の専門である情報アーキテクチャの観点からWebReleaseのアドバンテージを論じましたが、以下の記事ではマーケティングツールとしてのWebReleaseの可能性を詳しくご紹介しております。


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